この時季、園内を散策していると、甘い香りが漂ってくることがあります。「誰か、綿菓子を食べているの?」と思ってしまいますが、そのような方は見当たりません。皆さん、もうおわかりですね。カツラの落ち葉から出ている香りなのです。「野草の丘」「東トイレ付近」「スワンヒルの庭東側」等で、体験できます。
カツラは、北海道から九州まで日本全国の山地に分布し、ブナ林域などの冷温帯の渓流などに多く見られる落葉高木です。雌雄異株で、早春、葉が出る前に葉腋に小さな花を開きます。材は丈夫で腐れにくく、軽くて柔らかく加工しやすいうえ、狂いが少ないので、家具や将棋盤、囲碁盤に利用されています。
カツラの落ち葉が甘く香るのは、葉に含まれるマルトールという香気成分によります。 この香りは新鮮な葉ではなく、乾燥した葉から放出されることが分かっています。ですから、落葉する前の葉は匂いません。また、茶色になる前の黄色い状態の時が、最も香りを発するようです。自然学習センター内にかごに入れた落ち葉を準備しましたが、できれば直接落ち葉を踏みしめ、この時季にしか体験できない贅沢を味わっていただきたいと思います。